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篠笛その2 さりげなく寄り添うように

篠笛のおけいこ、2回目。
おけいこ場に着いたら、腕時計や指輪などアクセサリーをはずします。
なぜなら、1回目のおけいこの際、寛先生からこんなお話があったから。
「脇をつとめる笛は目立たないように、さりげなくいなければいけません」。
たとえば長唄なら唄い手や三味線に寄り添い、踊りなら踊り手、歌舞伎なら役者と、それぞれの主役に寄り添い、引き立てる存在でなければいけないのです。

笛を吹き始める所作も教えていただきました。
正座して右横に置いた笛を、右手で持ってそっと膝の上へ。
歌口(息を吹き込む孔)あたりに左手を添えて、くちびるに持っていきます。左手で口元を隠すように。
笛の位置が決まったら、左手の指は孔を押さえるポジションへと滑らせます。

「気がついたら、いつの間にか笛の音が聞こえて来た、というように」。
さりげなく、寄り添うように。その心持ちで、2回目のおけいこに臨んだのでした。

まずは、初回の復習、「とうふ屋さん」から。
「とう~~~ふぅ~~~」と吹きます。うん、うん、音は出る。が、しかし。息が続きません。
寛先生はゆっくり長~く、「とう~~~~~ふぅ~~~~~」を一息で吹くのですが、弟子一同はというと「とう~、ふぅ~、」ぐらい……。
「息が出る口はなるべく細く、くちびるをこじ開けて息を出すように」と寛先生。
きっとコツが飲み込めると、無駄な息を使わずに、よい音を長く出せるようになるに違いないと、はなはだ心もとない状態ながらも、希望的に予測したところで、おけいこは次の段階へ。

おけいこでは先生も私たちと同じプラ管でお手本を吹いてくださいます。が、当然ながら同じプラ管とは思えないくらい、音色は全く違います。。。

おけいこでは先生も私たちと同じプラ管でお手本を吹いてくださいます。が、当然ながら同じプラ管とは思えないくらい、音色は全く違います。。。

 

指をピョン、チョン、くちびるをキュ。
篠笛ではリコーダーのようなタンギングをしません。
同じ音が2つ以上続く場合、「指をピョン」と一瞬離したり、「チョン」と孔を一瞬ふさいだりして音を区切ります。
指を離す、指を打つ、ということは、楽譜にある音の他に、1音高い音や低い音が付随して混ざってくる、ということ。お手本を吹いてくださった寛先生の笛の音を聞いて、そうだ、これこそ粘り、揺らぎのある邦楽らしい味わいだと感激もしきり。

この味、演歌の「こぶし」にも通じるのでは?
そもそも「こぶし」とは、長唄や民謡など日本の伝統音楽の用語で、基本となる旋律の間に細かい節を入れて装飾する技法。「小節」という漢字が使われていたのだそうな。
タンギングで音を区切り、はっきりとしたクリアな音階を奏でる西洋音楽の演奏法では決して出せない、日本人の魂の音色なのだと納得したのでした。

そして、おけいこはさらに次の段階、「くちびるをキュ」へ。
篠笛の手孔は7つ。だから7つの音しか出ないはずなのですが、実際には基本の呂(りょ)の音を含めて音域は3オクターブも。
指のポジションは同じでも、吹き込む息の勢いを強くすると、オクターブ上の音、甲(かん)が出るのだといいます。
そのために必要なテクニックが「くちびるをキュ」なのです。

たとえば、ホースで水を出す時、ホースの口を細くつぶすと、出る水の量は同じでも、勢いが強くなる。同じように、くちびるをいつもよりもキュっとしめると、息の勢いが強くなり、甲音が出る。
息の強弱を操ることで、笛の音は高く低く、オクターブの変化を自在に行き来するのです。

なるほど。では、実際に吹いてみましょう。
………………出ません。
情けないことに、呂の音が力一杯の音量で響き渡るだけ……。
それでももっと強く、顔が赤くなる勢いで息を吹き込むと、やっと出ました! 1オクターブ高い音!!
しかし、悲鳴のごとき怪音。しかも、一瞬だけなのでした。

「さりげなく、寄り添うように」の境地は果てしなく遠い、と、半ば呆然とした気分で、2回目のおけいこはお開きとなったのでした。

(中村千春)

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