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能楽 その8 「気」をためる

某月某日。
おけいこへ行く前にちょっと時間があったので、自宅で一通り仕舞の練習をした。
もう動きに迷うことはほとんどないので、あとはいかにカッコ良く、形良く、それっぽく舞えるかどうか(←違)。

自主練ではそこそこイイ感じに舞えていたので(当社比)、意気揚々とおけいこ場へ向かった。
ところが、自宅では安定していた動きが、おけいこ場では動きがためられないというか、軽く感じられて安定しない。
おけいこ場だとなぜか勝手が違う。同じような感覚で動けないのだ。なんで?どうして??

先生に率直にそのことを告げると、とても面白い答えが返ってきた。
「あ、それはですね、空間の大きさの違いです」

つまり、自分の発する「気」に対して空間のほうが大きいと、「気」が抜けてしまうということらしい。
大島先生も初めて国立能楽堂の舞台に立ったとき、そういう感覚に陥ったことがあるそうな。
おけいこ場より一回りも二回りも狭い拙宅のリビング空間には対峙できた私の「気」も、おけいこ場ではまるで足りていない、ということのようだ。

そこから話が展開し、先生はこうも続けた。
「能は空間を動かす芸能とも言われているんです。両手をかまえて自分の前にエネルギーをため、その空間を動かしていくという感覚。方向を変えるときは、ためたエネルギーを次の進行方向に向かってぐぐぐっと移動させる。そんなイメージです」

なるほど。
さっそくそのイメージで舞ってみる。
わずかながらも「気」というものをためて、それを動かすということを意識する。
自分の動きは隙だらけで、ふとした瞬間に「気」はするりと抜けたり、こぼれたりしてしまうのだが、迷う部分が少し減り、さっきよりは動きが安定する感覚があった。
ゆっくりと動こうとするのではなくて、エネルギーをためるという意識を持ちながら動く。
すると、型というものの意味というか必然性みたいなのも、うっすらとだけどわかるような気がした。

次はいよいよおさらい会本番。人前で何かパフォーマンスをするのは何十年ぶりだろう? 中学の合唱コンクール以来かも。あー緊張するな~。

隙だらけの私のカマエと、お手本の先生のカマエ

隙だらけで気が抜けまくっている私のカマエと、お手本の先生のカマエ。こうして写真で見ると全然違う…

by ここん管理人2号

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