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201411/22

Vol.2 神事と芸能の里、黒川能へ

山形県鶴岡市黒川で室町時代から500年間、途絶えることなく受け継がれてきた黒川能。
2月1日、2日は、黒川能最大の神事である「王祇祭(おうぎさい)」が行われます。
雪に包まれた厳寒の里が、1年でもっとも熱くなる2日間。
信仰と表裏一体となった芸能が、今も脈々と暮らしの中に息づいている様子をひと目見たくて、
一路山形へ飛びました。


■いざ、山形へ!
2月1日昼過ぎ、羽田空港にここんメンバーは集合した。みな、着ぶくれている上に、足もとはスノーブーツ。1泊2日のこの取材旅行、手荷物の半分以上は防寒着である。山形県黒川といえば地吹雪で有名なくらい雪深い町。そこで夜通し能を見るのだ。オールナイト能だ。冷えは禁物。何はなくとも防寒対策!準備は完璧。いざ黒川へ!

庄内空港にいさんで降り立った私たちを出迎えてくれたのは一面の銀世界………ではなく、ほとんど雪のないごくごく普通の地方都市。タクシーの運転手さん曰く、「今年はえれぇ雪がすぐねぇ」だそうで。
予習に見た黒川能のDVDにあった横殴りの吹雪きの映像が脳裏をよぎる。まあ、イメージとはちょっと違うが、寒くないのはいいことだ。厚着しすぎで額にじんわり汗を浮かべながら、私は運転手さんにほほえんだ。膝の上には「寒さ対策」という理由で買い込んだ日本酒がずしりと重くのしかかる。そうそう、防寒着ともう一つ、事前に調達しておいたのは、肝機能を高める「ヘパリーゼ」。ほかのメンバーは、途中のコンビニで「ウコンの力」を買った。だってオールナイト能なのだ、体調管理には最新の注意を払わねばなるまい。オールナイトなんてものから遠ざかって久しい三十代。己の身体を過信してはいけないと戒める。

■王祇祭、その狭き門?!
ここからさかのぼることおよそ3ヶ月、「伝統芸能な旅」の企画第二弾として黒川能が上がった。調べたところ、アポ無しで見られるわけではないようで、事前に申し込みをし、抽選に通った人だけ参加できるらしい。まるでジャニーズのコンサートだ。
そこで4人のメンバーでそれぞれ応募し、誰かが通ったらその同行者として参加するという作戦に打って出た。申込書には住所・氏名・電話番号のほか、同行者の名前と鑑賞したい理由まで添えよとある。どんな理由が事務局側のココロに響くのかはわからない。我々4人は鑑賞動機もバラバラにし、申し込み手段もごていねいにファックス、手紙、メールと変えて申し込んだ。
およそ1ヶ月後の12月某日、続々と落選通知が届く中、4人のうち1人から「通った!!!」という吉報が入った。よっしゃ!

ほどなくして送られてきた参加案内通知には、
「収容規模等を受けまして、観能者を120名に限定し抽選を行った結果、貴方様から参加していただくことになりました。」
とあった。狭き門をくぐり抜け、黒川能への切符を手に入れたのだ!と一気に気分は高まり、年が暮れていったのであった。

■黒川能とは

黒川の鎮守の神・春日神社

黒川の鎮守の神・春日神社

ここで黒川能について少しご紹介したい。
黒川能とはそもそも、山形県鶴岡市櫛引の黒川集落にある、春日神社に奉納される神事能。その歴史は500年と古く、中央の五流(観世、金春、宝生、金剛、喜多)と同系でありながら独自の伝承を続け、国の重要無形民俗文化財に指定されている。
能役者は地元の春日神社の氏子の人々で、子どもから老人までおよそ160人ほど。春日神社からの旧道を境に、南側の集落を上座、北側を下座として二つの能座を形成し、それぞれ持っている演目も異なる。年間を通して祭事や公演で能が行われているが、毎年2月1日、2日に行われる王祇祭(おうぎさい)が1年で最も重要な行事。

 

 

黒川能は、能面230点、能装束400点、演目数は能540番、狂言50番と民俗芸能としては非常に大きな規模を保っている

黒川能は、能面230点、能装束400点、演目数は能540番、狂言50番と民俗芸能としては非常に大きな規模を保っている

王祇祭では上座と下座、それぞれに当屋と呼ばれるその年の当番の家が決められる。当屋は春日神社を出たご神体(王祇様)を迎える神宿であり、かつてはこの当屋の家に能舞台をしつらえ、演能が行われていた。現在では諸事情から公民館に場所が移されたが、当屋の主は当屋頭人(とうにん)として一世一代の大役を果たす。

上座と下座の二つの能座は、お互いにライバル意識を持ち、芸を磨いてきた。王祇祭の1日目は、二つの当屋でそれぞれ夜を徹して演能が行われ、2日目は春日神社の拝殿で両座が共演する。
芸術的な洗練を極めた中央の能とは対照的に、自然とともに生きる人間の原始的なエネルギーが残されているのが黒川能である。

 

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