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能楽その7 思わぬ人生の拾い物

おけいこも残すところあと3回。
おさらい会の日が着々と近づいてまいりました。ひゃー!

謡は「連吟(れんぎん)」といって、複数人で一緒にうたいます。
舞台での流れはこんな感じ。

1.全員無言で舞台に登場し、おのおの座ったら扇を身体の右側に置く。
2.全員が所定の位置についたら、同時に扇を身体の正面に置き、そしてそれを膝の上に置く。
3.よきタイミングでうたい出す。
4.うたい終えたら扇を再び正面に戻し、それから体の横へ移動させて脇に差す。
5.立ち上がってしずしずと退場。始まる前も終わった後も、礼はしません。

この一連の動作を、全員でそろえてやります。
おたがいのアイコンタクトはナシ。
「せーの」とタイミングをはかることもしなければ、「さん、はい」とキュー出しをしてくれる人もいません。
視線はまっすぐ正面に据えたまま、おたがいの呼吸を察して動きを合わせ、隣の人が息を吸うのを感じつつ、自分も同じタイミングで吸い、そしてうたい出す。

これがけっこう難しい。
合わせようとしすぎると遠慮が立って逆にタイミングが合わなくなります。
相手の出方を待って自分が出るのではなく、一緒に出よう、出そう、と意識すること。

昔から団体行動は苦手で、大人になった今も自分のペースで物事を進めるのがデフォルトの私。
ここへ来て「相手の呼吸を感じ取る」必要性に迫られるとは。

しかし不思議なことに「相手の呼吸を感じる」ことに意識を注ぐと、人前で何かをやるときにいつもついてまわる「うまくやろう」とか、「よく見せよう」とかいう感覚から解放されることに気づきました。
そしてそのまま謡の声の中に自分の声も溶けこませ、自分自身すら溶け込ませて一体化していくと、これが実に気持ちいい。
短い謡なので、そんな瞬間は儚くもすぐに消えてしまうのですが、これが長い謡だったらさぞかし気持ちがいいのでは。

右隣に座る人の「気」を自分の右半身の全部でとらえながら、思わぬ人生の拾いものをしたような気がする今日この頃でありました。

by ここん管理人2号

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