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長唄三味線その10 譜面には書かれていないこと

Text by ここんM

三味線のお稽古が始まって早4か月が経ちました。
近頃の我々が直面しているのは、譜面には書かれていないことがたくさんあるらしい、ということ。
書かれていないというよりは、書き表せないといったほうが近いでしょうか。

栄八郎先生が私たちを指導してくださるとき、「そこは譜面で書くとこう書くしかないんだけど…」とか「譜面にすると便宜上こうなっちゃうんだけど…」と、なんともはがゆそうにされる場面がよくあります。譜面通りに弾くと、間違いとまではいかなくても、目指す曲のありようとは違ってしまうようで、そんなときは実演したり、口三味線でリズムをとったりして、どう弾くかを教えてくださいます。
「ここは唄を聞いてから次の音を出して」というような場所もあって、三味線だから三味線の旋律だけ覚えればいい、というわけではなく、唄の流れも知っていないといい塩梅の間合いが取れません。唄は三味線の糸についたかと思えば離れ、先に行ったり、後から来たり。お互いがお互いを感じながらも、とても自由な距離感で走っていく感じ。

だから譜面上は同じように拍が並んでいても、場所によってテンポは伸びもするし、縮みもする。そんな譜面には書かれていない一つ一つが、実は曲を曲らしくしている要素のようで、私たちはおけいこを通じて少しずつそれを学んでいます。



(譜面をそのまま追うのではなく、「ヨーイ」とか「ハッ」とか、先生の掛け声でタイミングを覚える。)

栄八郎先生いわく、
「昔は譜面なんて見ないでお師匠さんの手のほうを見なさい、って言われておけいこしてた。そうするとそのお師匠さんのノリというか、拍がうつる。越後獅子くらいなら譜面なしで覚えたので、あらためて譜面で見るとこんなふうに書いてあるのか、と思いますね」

現代ではどんな情報もたいがい文字や記号に置き換えて整理されていて、私たちはそれにリーチするとそれだけで知ったような気になってしまう。でも文字や記号にならない情報は、当たり前だけどたくさんある。対面で教わることでそれを実感します。

出だしからサビの「太鼓地」、有名な「晒(さらし)の合方」まで、都合8ページ分を通して一通り形になりかけたこの日。栄八郎先生の総評は、

「みなさん、だいぶ弾けるようになりましたね」

おお!(喜ぶ一同)

「あとはもうちょっと音楽らしくなれば

え…。(虚を突かれる一同)

「音楽らしく」の言葉にみんな思わず苦笑い。
まだ音楽にすらなれていない我らの越後獅子。残り2か月で先生の拍が少しでも私たちにうつるよう、精進したいと思います。
P1050724


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楽器協力:株式会社SEION
稽古場協力:穏の座

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