© ここん All rights reserved.

長唄三味線その7 LOOK AT ME!!!

Text by ここんM

「越後獅子」に挑戦して3回目のおけいこです。
譜面にして9ページ分もあるこの大曲、全部をやるのは難しいでしょうということで、とりあえず導入部分(約2ページ)と、太鼓地(たいこじ)と呼ばれるサビ部分(約1ページ)、そしてラスト1ページ分ほどを目標に進んでいます。

前回、前々回で導入部分が終わり、今回はいよいよサビの太鼓地。
越後獅子は名前の通り、越後、つまり新潟の旅芸人が江戸へ興行にやってくるという場面が唄われています。導入部分は新潟からはるばる出てきて、「きたァりける」(「ついに江戸へ来たぞー!」)というところまで。
余談ですが、わたくしは新潟出身。唄の旅芸人にシンクロするように、我々の稽古もようようここまで「きたァりける」ってな気持ちで臨んだのでありました。

が、アウェイは厳しかった。江戸にやってきてさっそく迷子です。譜面を凝視しつつ必死についていこうとしますが、音の流れを理解していないのでボロボロ。栄八郎先生から、「譜面を見るとわからなくなっちゃうから、こっちを見て。」と先生の手元を見るように言われます。

いや、先生、無理っす。譜面から目を離したらわたくし、一歩たりとも先へ進めませんっ。
なんなら江戸からもう一度越後へ戻るのも、まったくもってやぶさかではないくらいですが、師匠の言うことを無視するわけにもいかず、譜面から目をひき剥がし、先生の手元を見てその動きを真似ます。
案の定、指は迷い、撥先からは自分の意図とは全然違う音が放たれます。焦れば焦るほどなぜか一の糸のドーンという開放弦ばかりが響く。
が、めげずに続けます。何度かやるうちに一連の手の動きがなーんとなくつかめ、すると譜面を見ても一音一音の連続ではなく、旋律ごとのかたまりが認識できるようになってきました。
しかしその認識は非常にあいまいでふわっとしてて、すぐに不安になってつい譜面に目が行ってしまう。するとすかさず先生から「はい、こっち見て!」と言葉が飛んできます。

こけつまろびつ、先生の励ましにすがるようについていき、なんとか太鼓地パートを終えたところでこの日のおけいこは終了。

さて、その日の帰り道。おけいこの内容を振り返っていると、ゲスト女子Mちゃんがうっとりとした顔つきで言いました。
「先生が『僕を見て!』って言っていたとき、なんかドキドキしちゃった♡」

うむ、確かに先生の演奏姿はカッコイイ。「こっちを見て」が、なぜか「僕を見て!」というロマンティックなセリフに脳内変換されてしまうほどに。
そんなことを思う余裕なぞ1ミリたりともない私は、次はもうちょっとみんなの足を引っ張らないよう、自主練に励まなくてはと自分を奮い立たせていたのでありました。

R0110007
先生の真横のポジションは人気席。普通はなかなか見られない角度から華麗な撥さばき、指さばきが堪能できます

<<長唄三味線その6 おけいこの合間に
長唄三味線その8 ド と レ の間に、音は無数にある。☆特典音源あり>>

楽器協力:株式会社SEION
稽古場協力:穏の座

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

日本舞踊その4 梅は咲いたか

Text by ここんM 「今日はちょっと違う曲をやりましょうか」 4回目となるこの日、いつも通り40分ほどじっくり時間をかけて基本練習…

長唄三味線その8 ド と レ の間に、音は無数にある。☆特典音源あり

Text by ここんK 10代の頃、ピアノを習っていたときの疑問: あれだけ多くの鍵盤があって多くの音程を奏でられるけど、でも、例えば…

長唄三味線その6 おけいこの合間に

Text by ここんN 4月。新しい環境での暮らしが始まった方もいらっしゃるでしょうか。ここんの面々も仕事や家庭、学校のスケジュールを少…

長唄三味線その9 助手をください

Text by ここんN 初春から始まった越後獅子との格闘も、夏を前にしてようやく先生が抜粋してくださった部分をひと通り浚い終えました。曲…

日本舞踊その2 身体で覚える

Text by ゲストメンバーS 踊りというものは動作を言葉で説明するとどこか失われるものがあり、書類で残すことはできません。つまり頭で覚…

小鼓 その3 伝統芸能と伝統工芸

小鼓は胴の部分と皮の部分とに分解できる楽器です。使う前に組み立て、しまうときにはバラす。おけいこのときも、毎回、源次郎先生の書生さんが私たち…

長唄三味線【最終回】 宴、それは素人の舞台(ステージ)

Text by ここんM かねてより、三味線が弾けるようになったらお座敷で宴会をしながら三味線を弾いたり唄ったり、ちょっと粋がった遊びをし…

長唄スピンオフ: ゲッツ!YU・KA・TAツアー

精いっぱい唄ったあとは喉が渇きます。おけいこ終了後は当然のごとく、足はまっすぐ駅には向かいません。何はともあれビールで喉を潤す、というのがわ…

能楽 その8 「気」をためる

某月某日。 おけいこへ行く前にちょっと時間があったので、自宅で一通り仕舞の練習をした。 もう動きに迷うことはほとんどないので、あとはいかにカ…

篠笛その5 和のお稽古をする、ということ

突然ですが、歌舞伎好きです。 歌舞伎との出会いは、2001年の秋。隅田川畔に出現した平成中村座。 桜席(舞台上に設けられた2階席)から見た「…

長唄その7 いよいよ浴衣会が近づいて、分け口でのおけいこがスタート

さてさて、分け口も決まり、浴衣会まで残すところあと3回のおけいこ(+リハーサル)を残すのみ。 前回から約1ヶ月ぶりのおけいこです。 自分のパ…

長唄三味線その10 譜面には書かれていないこと

Text by ここんM 三味線のお稽古が始まって早4か月が経ちました。 近頃の我々が直面しているのは、譜面には書かれていないことがたくさ…

長唄その8 うたがこころをもちあげる

前回、前々回とお休みする人もちらほらいたので、久々に全員そろった8回目のおけいこ。 けいこ場のドアを開けると、目に飛び込んできたのはいつも…

長唄その6 めざせ日本人

蒸し暑~い夏の夜、威勢のいい「供奴」の音源を聞きながら、6回目のおけいこへとやってまいりました。迎えてくださった政子先生の浴衣姿が何とも涼し…

長唄三味線その1 ゴールは遠く、果てしなく

過去のものの良さを勉強して 知るようになって 自分のものにして 自分がそういうものから 特別な愉しみを得ること 伝統は時々…

ページ上部へ戻る