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長唄三味線その5 迷子の越後獅子

Text by ここんN

驚くべきハイペースで「宵は待ち」「松の緑」を終え、お次の曲は~、ついにきました「越後獅子(えちごじし)」!

長唄の中でも特に有名なこの曲。町人文化の賑やかなりし江戸後期・文化8年、1811年に歌舞伎役者3代目中村歌右衛門の踊りのための曲として作曲され、200年経った今も人気のあるスーパーロングヒット曲です。

それだけ長く愛されているにはやっぱり理由があるようで、駆け抜けるような軽快な曲調、繰り返される印象的な旋律、後半に向けての盛り上がりと、わくわくする要素がてんこ盛り。
栄八郎先生のお手本を聞いて、「かっこいいー!!」と一同早くも大騒ぎです。

せっかくなら長唄をしっかり楽しめるものを」と先生が選んでくださった曲。三味線に触って2ヶ月足らずの私達にはいささか高いハードルのようにも思えましたが、いやもう、このかっこよさにはやられました。超えてみせましょう、このハードル。

まずは配られた楽譜を見ながら、順に音を確認していきます。
そういえばまだ説明していなかったので、ここで三味線の楽器と楽譜を簡単にご紹介。

まず三味線。
ものすご~く簡単に言うと、右手に持った撥(ばち)で弦を鳴らして演奏します。
三味線には太さの違う糸が3本。一の糸(太い・低音)、二の糸(中音)、三の糸(細い・高音)と並んでいて、1本だけ鳴らせば単音、2~3本同時に鳴らせば和音です。

さらに、左手の指で糸を押さえ、押さえる位置によって音程を変化させます。
ギターだと棹にフレットと言われる突起があり目印にもなりますが、三味線にはありません。ゆえに初心者は「どこを押さえると、どの音が出るのか」が皆目見当が付かないのですが、昨今はこんな便利なものが!

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棹の横にペタッと貼ると、押さえる場所の目印になるという画期的なシールです。文明の利器ってやつですね!有り難や~。

次に楽譜のご紹介。
私達が使っているのは三本線で表記してあるタイプです。
譜面上の三本の線は、そのまま三味線の糸の種類を指示しています。

160303_4_R0110144

・上の線は、三の糸(高音)
・真ん中の線は、二の糸(中音)
・下の線は、一の糸(低音)

線の上に書いてある「10、7、6」という数字は、左手の指で押さえる位置を指示しています。
三本の線と数字の組み合わせによって、どの糸の、どこを押さえて弾くのかを、この楽譜は表しているのです。

これまでの稽古でなんとか楽譜は読めるようになり、スクイやハジキなどの基本的な奏法は理解できた私達。配られた越後獅子の楽譜を見ながら弾く音を順番に確認した後、一度試しに合わせて弾いてみました。

「いーやっ (出だしのタイミングを合わせるための掛け声です)!」
楽譜をじっとにらみながら、右手の撥、左手の動きをゆっくりゆっくり追いかけます。初めの何小節かは「おお、越後獅子だ~」などと自分の三味線から知っている音楽が聞こえることに感動しながら調子よく弾いていましたが、進むにつれて何かがおかしい。
ん?あれ?あれれ?
・・・すいません、いまドコデスカ?

どこを弾いているのか途中で分からなくなる人が続出。
越後獅子では似たような旋律が、音やリズムを少しずつ変えながら繰り返し出てきます。楽譜を目で追いながら「どの糸の、どこを押さえて」と考えて弾いていたのでは、追いつかないわ見失うわで、即迷子。ゆっくり弾いていて迷子ですから、本来のスピードで弾こうものなら、もはや戻ることも叶わず行方不明になりそうです。

先生曰く、迷子にならないために大事なことは、歌を覚えることと、手の動きを固まりで覚えてしまうこと。踊りの振りを覚えるように、曲と手の動きをまるっと覚えて、頭の中で歌いながら、自然にその手が(振りが)出てくるようになるまで、何度も何度も弾いて慣れていくしかないようです。

楽譜がなかった時代は、師匠の音と手の動きを良く聞いて、良く見て、覚えるしかなかったそうですから、それに比べれば、楽譜という道しるべがあるだけでも有り難いと思わねば。

そんなわけで、栄八郎先生のお手本を毎度食い入るように見て勉強。

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あんな風にかっこよく弾けるようになるかな~
きっといつかは出来ると信じて、反復練習の日々は続きます。

 

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楽器協力:株式会社SEION
稽古場協力:穏の座

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