© ここん All rights reserved.

長唄三味線その4  ハイペース… マイペース…

Text by ここんゲストメンバーN

つい先日、みんなで三味線の構えの練習をしたと思っていたら、なんともう「宵は待ち」は終わりにして、今日明日で「松の緑」を仕上げましょう!という先生のお言葉。え、だって、「松の緑」って今日初めてみんなで演奏する曲ですよね? たった一回、出張でお稽古をお休みしただけで、こんなにも先に進んでいたとは…。己のマイペース加減と、先生のなかなかハイペースなご指導の差が開きすぎて、もう背中も見えません(苦笑)。

さて、今回演奏している「松の緑」は、杵屋六翁(4世杵屋六三郎)による作曲。安政年間頃の作品と言われ、六翁の娘の名披露目の会にて唄われたとのこと。娘を松の若葉の初々しさに例えて、将来は大夫になるべき風格を備えるようにと詠まれた、娘の前途を祝した内容になっています。

「宵は待ち」に並んでお稽古の代表的な曲とされていますが、曲の趣を十分に表現するには実は熟練を要することでも知られる「松の緑」。

三味線の調絃には大きく分けて三つの種類があります。「三下がり」という調絃だった「宵は待ち」とは異なり、「松の緑」は「本調子」。ちょっとの違いで、随分と印象が変わります。

また、絃をはじいた撥をそのまま上にあげて絃をすくうようにして音を出す「スクイ」や、絃を抑えていた指でそのまま絃をはじいて音を出す「ハジキ」など、(我々には)高度な技法が次々と、しかも合わせ技で登場。

「ス」はスクイ、「ハ」はハジキ。「宵は待ち」に比べてぐっと譜面が込み入ってます。

「ス」はスクイ、「ハ」はハジキ。「宵は待ち」に比べてぐっと譜面が込み入ってます。

 

すでに周回遅れで、演奏どころか三味線を構えるだけでも四苦八苦の僕。そして、先生から注がれる熱い視線。

撥に意識が集中すれば左手がおろそかになり、絃の勘所に気が向くと右手が動かなくなり、そしてどちらも頑張ろうとすると体が傾く…。弾いている最中は全く実感がありませんが、あとで写真や動画を見返してみると、撥は寝てるし、棹も寝てるし、体は傾いてるし…。
P1050516 (2)
もはやエレキギターの構え

ついに業を煮やした先生。ここから、個人レッスン&猛特訓が始まりました(他の皆様、先生を独占してすみません)。

P1050495

P1050500
ご覧の通り、文字通り手取り足取りです。

P1050559 (2)
翌日のお稽古でも…

昔からよく言われます。
「学ぶ」とは「真似ぶ」こと。習うより慣れろ。
でも、言うは易しなんです。人のまねをするのがこんなにも難しいとは…。
そして、社会人になってから未知のことにチャレンジするのがこんなにも大変だったなんて…。

でも、不思議と楽しいんです。「あぁ、今日お稽古だ…」と思いながらも、早々に残業を切り上げて足早にお稽古場所に向かう自分がいます。
先生の熱心なご指導にお応えしたいという気持ちは勿論ですが、拙いながらも楽器を持って音を出すことの大変さを身をもって知ったことで、長唄の音楽の面白さや奥深さに対する理解が深まってきたことも楽しさの理由の一つかもしれません。そういえば、自然と先生のお手本を聞く耳も変わってきたような気がします。

地道に練習を重ねて習熟していくことが先生のご指導への何よりものご恩返し、とは分かっているものの、はてさてどうなる事やら…(ゴールは遠く、果てしなく)。
P1050553 (2)

<<長唄三味線その3 先生を振りまわし、三味線に振りまわされ
長唄三味線その5 迷子の越後獅子>>


楽器協力:株式会社SEION
稽古場協力:穏の座

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

長唄その10 あっという間のリハーサル

(※もう冬ですが、夏の終わりの記憶を振り返っております) 今年の夏は暑かった! 東京では観測史上最も長く猛暑日が続くなど、記録的な暑さだった…

長唄その7 いよいよ浴衣会が近づいて、分け口でのおけいこがスタート

さてさて、分け口も決まり、浴衣会まで残すところあと3回のおけいこ(+リハーサル)を残すのみ。 前回から約1ヶ月ぶりのおけいこです。 自分のパ…

長唄三味線その5 迷子の越後獅子

Text by ここんN 驚くべきハイペースで「宵は待ち」「松の緑」を終え、お次の曲は~、ついにきました「越後獅子(えちごじし)」! 長…

能楽その2 無心に「謡う」

「はぁ~な~もぉ~えぇ~るぅやぁ~ さーあぁ~か~ず~き~の~ぉ~」 あーー、鼻歌が気持ちいいっ! お風呂でも自転車でも陽気…

篠笛その2 さりげなく寄り添うように

篠笛のおけいこ、2回目。 おけいこ場に着いたら、腕時計や指輪などアクセサリーをはずします。 なぜなら、1回目のおけいこの際、寛先生からこんな…

長唄三味線 おけいこ前のひと騒動

昨年夏の暑~い長唄おけいこを終えて、はや数ヶ月。間もなく「おけいこの時間」新シリーズが始まります。続いて我々が挑戦するのは、長唄三味線! …

長唄三味線その6 おけいこの合間に

Text by ここんN 4月。新しい環境での暮らしが始まった方もいらっしゃるでしょうか。ここんの面々も仕事や家庭、学校のスケジュールを少…

日本舞踊その2 身体で覚える

Text by ゲストメンバーS 踊りというものは動作を言葉で説明するとどこか失われるものがあり、書類で残すことはできません。つまり頭で覚…

長唄その3 サボっていた声帯、再び。

長唄のおけいこ3回目。 富士登山に例えれば5合目から6合目あたりだろうか(登ったことないけど)。 この後に難所が控えているとも知らず、まだま…

日本舞踊その5 怖くても嬉しい時間

Text by ここんN 夏の夜、涼やかにライトアップされた歌舞伎座を横目に、職場から稽古場へ急ぐ。皆さんにご挨拶しつつ、浴衣に着替えて、…

篠笛その1 不完全を愛する日本人

様々なジャンルの先生方にお試し入門し、おけいこの様子をつまびらかにレポートする本コーナー、第三弾は福原流笛方の福原寛(ふくはら・かん)先生に…

能楽その6 ステキ衝撃

中学生のころ、バスタオルの端と端を、わざとずらして畳んでいた。 ニューヨーカーのように、さらっとカジュアルに畳むことがカッコイイと思って。 …

長唄三味線その9 助手をください

Text by ここんN 初春から始まった越後獅子との格闘も、夏を前にしてようやく先生が抜粋してくださった部分をひと通り浚い終えました。曲…

篠笛その4 何の打算もなく

某月某日、篠笛のおけいこ4回目。仕事をダーッと片付けて、帰宅途中の電車の中で最短でできる夕飯のメニューを考え、スーパーへ駆け込む。あらかじめ…

能楽その1 中世日本人の身体運用を体感?!

伝統芸能を100倍楽しむには、慣れるより習え?! 様々なジャンルの先生方にお試し入門し、おけいこの様子をつまびらかにレポートする本コーナー、…

ページ上部へ戻る