© ここん All rights reserved.

ドラマチック、能!

能や狂言では、いたってシンプルな状況設定や登場人物でとても劇的な物語が描かれています。
物語が作られた中世でも現代に至ってでも同じく、現実離れした状況設定や人物が出てくることも多々。
たとえば、平均寿命が30歳代という中世にあって100歳近い老人が登場したり、この世の物ではない登場人物…幽霊や閻魔大王、更には植物の精が現れたりもします。
そんな極端にデフォルメされた状況や登場人物達で語られる内容は、とても日本人的な価値観を色濃く映し出したもので、時代が変わろうとも連綿と受け継がれてきた「日本人らしさ」=現代で能を観ている私たちの感受性に訴えかけてきます。

2016年1月〜3月にかけて横浜能楽堂で上演される「生と死のドラマ」は、人間の永遠のテーマである「生きること」と「死ぬこと」にスポットを当てた能・狂言・講演のシリーズ公演(全4回)です。

「生」と「死」はとても深いテーマではありますが、各回同じテーマで上演される狂言と能の2つの物語の共通性を楽しむことのできる公演です。

第1回 老いをどう生きるか

2016年1月30日(土)

狂言「枕物狂」(大蔵流)
能「鸚鵡(おうむ)小町」(喜多流)
講演:高橋睦郎(詩人)

「枕物狂」100歳にもなる祖父が若い娘に恋をして、噂を聞いて訪れた孫達に「恋なんて若い人がするものだ」とシラを切りつつも、ついには自分が恋をしていることを認めてしまい、最後には孫に連れて来られたお相手の若い娘と会って2人で連れ立って行きます。狂言の大曲「三老曲」の1つとして重く扱われています。

「鸚鵡小町」老女となり人に物を乞うような生活を送っている小野小町(昔名高い女流歌人)の元に帝の使いが訪れ、哀れみの歌が下賜される。返歌が欲しいと言う帝の使いに小野小町は帝の歌を一字変えただけの歌を返し、これは「おうむ返し」という和歌の手法の1つだと説明。更には和歌の道を語り、昔をしのぶ舞を舞います。

第2回 死者の行く先

2016年2月11日(木・祝)

狂言「政頼(せいらい)」(和泉流)
能「重衡」(観世流)
講演:多川俊映(興福寺貫首)

「政頼」人間が地獄に堕ちなくなったということで、鬼達を引き連れて自ら人間を地獄に落とそうと地上にきた閻魔大王は、鷹匠の政頼を見つけ殺生をするのは罪人だと言って地獄に送ろうとします。しかし政頼は、鳥を獲っている鷹を狩っているのだから自分に罪はないと言い、鷹狩りの起源を語り出します。鷹狩りに興味を持った閻魔は、政頼に鷹狩りをして見せてくれと命じます。

重衡」東大寺興福寺の伽藍を焼いて仏徒を殺戮した平重衡が、自らの罪の深さから、生け捕りにされ斬首される直前に仏に救いを求めたという、苦悩を業を描いた修羅能です。

第3回 『忠』と『情』の選択

2016年2月20日(土)

狂言「武悪」(大蔵流)
能「仲光 愁傷之舞」(観世流)
講演:西野春雄(能楽研究家)

「武悪(ぶあく)」とは、主に仕官する人の名前です。武悪が勤めに来ないと怒り狂った主人が、太郎冠者に武悪を討ってくるよう伝来の刀を持たせます。太郎冠者は武悪を切ることができず、一生主人に会わないところに行けと逃がします。ところが武悪は主人に見つかってしまいます。そこで太郎冠者は、主人が見かけた武悪は幽霊かも知れないと言い逃れ、武悪にもそのことを伝えます。目の前に現れた武悪が幽霊だと思い込んだ主人は一変して恐れ戦き、武悪に言われるがままに太刀や扇を渡してしまいます。

「仲光」は、多田満仲(まんじゅう)に使える藤原仲光のこと。満仲の子、美女御前は勉強もせずに武芸にばかり励んでいるため、満仲は美女御前を討つように仲光に命じます。深く思い悩んだ仲光は、自分の子、幸寿の首を身代わりに差し出し、出家をしたいと満仲に伝えます。そこへ美女御前を連れた恵心僧都が訪れ事情を話し、満仲に美女御前の助命を願いでます。満仲は恵心の言葉で美女御前を許し、酒宴となり、その席で仲光は舞を舞います。

第4回 万物に宿る生命

2016年3月21日(月・休)

狂言「野老(ところ)」(和泉流)
能「芭蕉」(宝生流)
講演:山折哲雄(宗教学者)

「野老」は、山芋の一種の植物です。旅僧の前に野老の霊が現れ、掘り起こされ料理される様子を地獄の苦しみに例えて謡い、舞を舞います。能の形式で演じられる独特な狂言です。

「芭蕉」読経する僧の前に女性の姿をした芭蕉の精が現れ、草木成仏について語ります。僧の読経の功徳で成仏することができる芭蕉の精は、自分は芭蕉の精だと僧に告げてその場をさります。その後も僧が毎夜読経していると、芭蕉の精が再び僧を訪れ、非情の草木も無相真如の體であることや、芭蕉葉が人生のはかなさを示していることなどを語り、舞を舞います。

チケット発売中

主催: 横浜能楽堂(HPはこちらから)
時間: 14:00~
料金:セット券/S席:28,000円 A席:24,000円 B席:20,000円
単独券/S席:10,000円 A席:9,000円 B席8,000円(全席指定)

<お問合せ・お申込み>
横浜能楽堂:045-263-3055
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

1つでも気になる要素があれば観て欲しい『日本舞踊×オーケストラ Vol.2』

日本舞踊と西洋音楽との共演は、かなり以前から「創作舞踊」として実験的に行われてきました。 そんな取り組みに対しては<ジャンルが違えば人が違…

「素」の魅力、ぎゅぎゅっと。

絵画の世界にデッサンというものがあります。 着色はなく、線だけで対象の骨格を、輪郭を、陰影を写しとっていくデッサンは、 絵を描くときの基盤で…

人類の求めるかぎり、唸れ。たっぷり!

「唸り」。その貴き存在。 発し手の身体の奥深くから湧き上がる魂の揺さぶりが、 声に乗り移り、空気を揺らし、 聴き手の魂を共振させる。 「唸り…

8月のピックアップ公演

暑中お見舞い申し上げます。もう1週間もすれば立秋。いよいよ芸術の秋ですね。ということで、今月もここん的おすすめ公演をご紹介。今回は落語が充実…

お箏(こと)は再発見できる。

お箏(こと)は、チョット不運な楽器かもしれない。 商店街でも甘味屋でもテレビでも、BGMとして溢れているから、 私たちは既にお箏を知ったつも…

舞台の上にも春がやってきた!

どこからともなく梅の香りが漂ってきて、 新しい季節の訪れを感じさせる今日この頃。 桜の開花予想まで発表されて、気分はもうすっかり春です。 …

7月のピックアップ公演

首都圏では早々に梅雨があけてしまい、今年は長~い暑~い夏になりそうですね。 伝統芸能公演が少なくなる夏場ですが、今月の公演情報は日本舞踊が充…

日本舞踊、面白いのに見たことないの?ちょっと今度一緒に観にいこうよ!

伝統芸能の面白さに目覚めると、いろんな舞台に足を運びたくなりますが、そんな時ふと欲しくなるのが一緒に観にいって「良かったね!」「今日はイマイ…

寒~い冬は演芸であったまる!

お祭りといえば、夏や秋? いえいえ、暖かくなるのを待たずとも、冬からお祭り気分で盛り上がってしまおうという街があります。それが高円寺。 夏…

匂い立つ谷崎潤一郎の音色

小説家、谷崎潤一郎。 誰もが一度は聞いたことのある「春琴抄」「細雪」といった不朽の名作を生んだ文豪です。 彼の作品は今も読み継がれるのみな…

間に合ううちに

あの名人の芸に間に合いたかったな、という人は枚挙に暇がありません。 ギリギリ間に合った人でも、脂の乗り切った最盛期には間に合わなかったな、と…

浅草の初夏の風景を三味線で。

邦楽の公演はおそらく、最も足を運ぶきっかけがつかみにくいものの1つだと思います。 そんな中、企画、出演者とも「面白そう!」と思わせてくれるの…

恋情・哀愁・春夏秋冬 艶やかな座敷舞の魅力

座敷舞って観たことありますか?上方舞・地唄舞とも言われています。 江戸時代後期に生まれ、能の動きを基本に歌舞伎や浄瑠璃の要素を取り入れた、情…

圧倒的な声の力~浪曲破天荒列伝!

話芸が好きだ。そも、人の声が好きだ。 役者の声も、ミュージシャンの声も、クラシックな声楽も、長唄も、小唄も、謡も、落語も、人の声とはなんと自…

7月のピックアップ公演

2017年もいよいよ下半期に突入です。が、焦らず慌てず、今月も伝統芸能の世界へいざ。7月から8月にかけて行われる公演やチケット発売になる公演…

ページ上部へ戻る