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長唄その1 邦楽フリーダム

P1040268 (2)さあ、またまたやって来ました、現代人のデトックスアワー「おけいこの時間」。
様々なジャンルの先生にお試し入門し、お稽古の様子をつまびらかにレポートする本コーナーの第4弾は、長唄(ながうた)! しかも、三味線ではなく唄のお稽古です!

お教えいただくのは、朗々たる美声でお若いながら様々な舞台に引っ張りだこの、長唄唄方・今藤政子(いまふじ・まさこ)先生。京都まで舞妓さんにお稽古をつけに行ってらっしゃるという、ステキすぎる先生の門を、いつもながら畏れ知らず叩いちゃいました。


≪そも、長唄とは?≫
歌舞伎のBGMとして発展してきた三味線音楽の一つです。正確には「江戸長唄」といって、「粋」「いなせ」などの江戸気風モリモリで、唄・三味線をベースに、多くの場合囃子を伴い、明るくリズミカルな曲調が特徴的。その名の通り1曲が比較的長く、バラードのように唄いあげる部分あり、三味線のソロ弾きをベンベン聴かせる部分ありと、かなりロックでグルーヴィなクールミュージック(私感)。三味線音楽の中では、愛好者がダントツに多いようで、現代の私たちが一番入り込みやすい音楽ではないかと思うのです。


★唄本萌え~
P1040118今回、全くの初心者である私たちのために政子先生が選ばれたのが『供奴(ともやっこ)』という曲。ご用意くださったこの唄本をご覧ください。かわいいでしょ~~!
透け感の美しい和紙に、黄色の格子柄の表紙をつけて、オレンジ色の糸で綴じてあります。サイズはA5を一回り小さくした感じで、このコンパクト感・フィット感が心地いい。仕事で慣れきったA4サイズが、やけに野暮に見えてきます・・・。いや、A4は野暮だよ・・・。
そして表紙を開くと、ころっとぷくっとした筆文字。しかもよく見ると手書き原稿!当たり前だけど、これを一文字一文字、時間をかけて丁寧に書いてくれた人がいるんだなぁ~と想像。オレンジの糸も、手作業で綴じられたのでしょうか。シンプルな唄本にも、数々の手仕事が重なり、その分の時間が重なり合ってここに辿り着いているのだと思います。そんな「手」の存在感が、温かい。あぁ、デトックス~。

★2mの幸せ
話をお稽古に戻すと、『供奴』。
政子先生曰く、これを選んだ理由は「発散系」だから(笑)。
まずはどんな曲か、先生にお手本を見せていただきました。
が、第一声でビックリたまげた!! 舞台上での先生の唄声を何度も聴いていますが、こんなに大きな声が出ているとは。しかも、もちろん本番用の声とは違うわけで。驚きをそのまま先生に伝えると、「ここは広くないし、反響するからでしょうね~」と。まぁ、確かにそうなんでしょうけど、でもでも、さらっと唄っている風に見えて、出てくる声の強さはやはり玄人の迫力! 1日目から早速、本格的鳥肌デトックス。
これまで、どのお稽古企画でもつぶやいていますが、本物をわずか2mの距離で感じられる幸せは、伝統芸能のお稽古ならではだと思います。バレエとかピアノとか、システマティックな体制を整えた街のレッスンプロがたくさんいるのも大切ですが、ステージプロがステージプロのまま素人にお稽古をつけることができるお稽古文化を、無くしたくない! Viva和稽古。ホント。

★奴さんたら・・・
P1040120 (3)さてさて『供奴』の内容はというと、武家に奉公している奴さん(下働きの男性)が、吉原に遊びに行くご主人のお供を命じられるのだけど、見失ってしまい、探す代わりに、なぜか大好きなご主人自慢のおしゃべりが止まらない。(誰に話してるんだか…。)吉原に着いたら着いたで、待合室では更なるおしゃべりに一芸披露、そして再びご主人に置いてきぼり・・・という、何ともおっちょこちょいなお話のよう。
奴さん、アホっぽいけどカワイイです。大好きでしょうがないご主人に仕える、そんな主従関係も悪くない。唄の中で、堂々とおっちょこちょいになりきって、上司の自慢をしまくるって、なんか楽しい♪「見はぐるまいぞよ 合点だ~!」って(笑)。(「はぐれるな!よしきた!」って一人で言ってる感じ?)

★遠泳、自由形。
ということで、先生の三味線(これがまた素敵☆)に合わせてお稽古開始。
ご覧のとおり唄本には歌詞と三味線の「チン ツン テン」というよくわからない暗号が載っているだけ。先生の唄を聴き取って、音をどう上げるか、下げるか、伸ばすかは、自分の感覚で書き込んでいくようです。先生曰く「譜面にしていくのは、ご自分でね」と。この自由さも伝統芸能らしさ。ところが、何をどう書いたらいいかさっぱりわかりません。とりあえず棒線やニョロ線で適当書き込んでみたものの、次に唄っても自分の書いた記号がよくわからず。完全迷い子…。まるで救命胴衣を着けて大海原に放り込まれる感じ?「ほい、やってみな」っと。 でも、ここでアップアップする感じも、実は嫌いじゃない(笑)。
それ以上に良いのは、個人への信頼が根底に流れている教え方。政子先生が、西洋音楽との対比の中で、邦楽の教授法が確立されていないことについて話してくれました。つまり、邦楽は「あなたの方法で、あなたが一番いいと思うやり方で掴めればいいんだよ」っていうスタンスであると。
この力加減。柔らかさ。懐の深さ。ある意味、スローライフ。Viva、長唄。
伝統という大海の中で、とりあえず安心してアップアップしてみます!(ここんK)

P1040155 (3)

>>長唄その2 「楽しい」因、同時に「難所」は抑揚だったか!

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