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篠笛その7 邦楽は「間」が命。 音で「間」を創り出す

前回に続き、ふたたび話題は「間」の問題。

以前、歌舞伎をテーマにした講座に出たときのこと。そこで聞いて印象に残っている話がある。曰く「和の音楽には、1234~ではない“間”があり、ドレミファ~ではない音がある」と。
篠笛のお稽古を始めて、そのことを身をもって痛感することになろうとは……。

いよいよ次回に迫ったおさらい会に向けて、練習している「山ざくらの歌」。
この曲は、若山牧水の「うらうらと照れる光にけぶりあひて咲きしづもれる山ざくら花」に思いをよせて寶山左衛門先生が作られた曲。
「遠くにけぶるように咲く山桜に引き込まれていくような、ポカポカとした春の情景を表現した曲なので、聞き手がウトウトするぐらい、たっぷり吹きます」と、山左衛門先生ご本人がおっしゃっていたそうだ。

曲をきちんと覚えるために、お稽古の時に録音させていただいた寛先生のお手本の演奏を、しょっちゅう聞いている。
……が、しかし。
なかなか曲が覚えられない。特にテンポ、リズムの取り方が分からない。
1234、2234~と、心の中でカウントしながら吹いてみても、まったく正しく吹けないのだ。
お稽古の始めに、寛先生に「テンポの取り方がわかないんです」と聞いてみた。すると、「そんなものはいいんです。ご自由に吹いてください」と。
先生、そう言われると、ますますどうしたらいいか分かりません……。

そして、こうも話してくださった。「邦楽は“間”で表現する音楽です。音は間を創り出すための手段であると言っていいぐらい。息継ぎのために音が途切れたとしても、意識が持続していれば気になりません。篠笛は“歌う楽器”ですから、歌をうたうのと同じように、自分で間を感じて、それを表現すればいいんです」。
音そのものよりも、むしろ“間”にこそ、何かを感じ取る。日本人ならではの感性が育んできた、素晴らしき魂の表現方法なのだ。

「山ざくらの歌」では、最後、間をたっぷり取って曲の雰囲気を切り替える。それによって桜に心を奪われていたところから我に返る、という趣を表現する

「山ざくらの歌」では、最後、間をたっぷり取って曲の雰囲気を切り替える。それによって桜に心を奪われていたところから我に返る、という趣を表現する

「1234~ではない“間”」とは、まさにこのこと。やっと実感をもって理解した次第である。
同時に、伝統文化好きの純日本人でも、身体に染みついているのは西洋音楽的なリズムや音なのだな、と、今さら気づいたのだった。

ならば。1234~とカウントするのはもうやめよう。山桜にけぶる風景を目に浮かべて、ゆったりたっぷりと吹いてみよう。
息継ぎも演奏の内と考えて、世界が途切れないように。
そう自分に言い聞かせて、おさらい会前、最後のお稽古を終えたのだった。

(中村千春)

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